コンビニから見た「働き方改革」見直されるべきフランチャイズ契約の問題とは
コンビニを見るときっと気づく、日本の経済と働く皆さんが元気になる兆しがある
■収益モデルの開示とフランチャイズ契約の多様化が必要だ!
本部の問題点は、これまでオーナーの平均収益などを開示してこなかったことです。平均日販は公表されていますが、収益、日販ともに都市と郊外ではどれほど差があるのかも分かりません。今後、本部は「オーナーがどれだけ儲かるのか」という具体的な収益モデルを開示するべきです。そして、立地、エリアや規模に応じた売上と経費から算出した「適切な収益」をオーナーたちに周知する必要があります。
一般に開示すれば、それがオーナー希望者たちの判断材料になります。これまで、 そこが曖昧だったので、フランチャイズシステムの永続的運営の視点から見た経営において、オーナー側が納得できない場合が多かったのです。ドミナント戦略や競合店出店のリスクも今まで以上にしっかりと伝えていかなくてはいけません。
契約更新を迷うオーナーが増えるなか、本部は目先の収益を求めるのではなく、 長期的な視野に立って、どれほどの適正な利益を本部で確保するのかという考え方にシフトするべきです。これはコンビニだけでなく、国内業務に対する利益が大半を占めるすべての企業にも同じことが言えます。斜陽のなか、利益を前年比超を前提として考えるのはナンセンスです。
2019年11月、業界4位のミニストップは、加盟店とのフランチャイズ契約を見直し、これまでオーナー負担だった人件費や光熱費などの経費を、本部側が一部負担する方針を発表。2021年3月に全面本部負担への切り替えを予定しているそうです。
大手3社の追従も期待されますが、ひとつ大きな問題があります。それは、コンビニが初期投資の大きいビジネスだということです。
あるチェーンの初期投資の本部負担は、1店舗あたりに貸与している什器・POSで約1300万円。店舗の建築費・内装で約2000万円です。
土地の造成が必要な場合は、ケースバイケースですが5000万円以上の費用がかかることもあります。それに対して、一部の契約形態を除きオーナー負担は出資金という形の一部のみ。ほぼすべてを本部が負担していて、なおかつ家賃も本部が払っているのです。本部の利益配分が5〜6割だからといって、こうした事情を知らずに「本部がオーナーの利益を吸い上げている」と批判するのは早計かもしれません。そこの配分を見誤るとフランチャイズオーナーになる参入障壁が上がってしまうからです。
ただ昨今、オーナーの収益がマイナスになっている場合が多いと推察されるなか、 本部の最高収益が更新され続ける現状を考えると、今後はフランチャイズ契約の見直しをさらに進める必要があるのは明らかでしょう。
時間外労働の上限規制や深夜労働の割増賃金改定など、働き方改革によって人件費はさらに増えていきます。そうなると、従来の利益の配分では、これまで以上に経営が難しくなっていくでしょう。このため「オーナーが初期投資と家賃の一部負担をする代わりに利益配分を5:5にする」「初期投資や家賃は現状のままだが、 本部が初期投資を回収し終えたら利益配分を5:5にする」など、オーナーになりたい人ごとに契約内容が多様化していく可能性も考えられます。
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